愛媛から、日本に活気を再生する。

小山拓斗
Kaprio Lab
私は広島県呉市で育った人間である。呉市はかつて「30万人都市」と呼ばれ、海軍の町・造船の町として栄えた活気ある地域だった。しかし、私が成長する中でその風景は大きく変わっていった。
ここ数十年で人口は3分の1近く減少し、商店街はシャッターで埋まり、街に活気は少なくなった。中でも象徴的だったのが、日本製鐵・呉製鉄所の完全閉鎖だった。かつて呉の経済を支えていた大きな産業が姿を消すことにより、社員だけでなく、地元の下請け企業を含めた多くの人が職を失い、市外へと流出していった。事実、その影響は呉市の人口の約1割に及ぶとされており、私の友人や家族の多くも、町を離れていった。
産業が衰退するということは、単に“会社がなくなる”ということではない。学校の同級生が町を離れ、家族の収入が減り、商店が閉じ、まち全体が活気を失っていく。それは「経済が止まる」ということが、いかに人々の暮らしそのものを揺るがすのかという“リアル”を、私に強く突きつけた。
だが、これは呉市だけではない。今これは日本全体であり得ることなどだと思った。
そして、この体験を通じて、私は確信するようになった。
「経済が回らなければ、希望は生まれない」
「地域に根を張る“産業”をつくらなければ、未来は守れない」
だから私は、日本を変えたいと思った。まずは「地域から」。そのためには、新しい産業を生み出し、若い世代が未来に希望を持てる仕組みを自らつくる必要がある――。その思いが、私を“行動する人間”へと突き動かした。
“Kaprio Lab”誕生。自ら動き、自ら創る覚悟
2025年2月14日、私はKaprio Labを創業しました。キーワードは「地方×DX×実装力」。多くの地域課題に直面する中で感じたのは、「便利な技術がある」だけでは社会は変わらないということ。大切なのは、現場の声を聞き、経営と現場を橋渡ししながら、使いこなせる形でテクノロジーを届けること。
Kaprio Labのミッションは、既存のサービスを本当に役立つものへとカスタマイズし、現場のニーズとテクノロジーをつなぐこと。そして、「見える化」「改善設計」「定着支援」「成果の数値化」といったプロセスを通じて、職場にフィットしたDXの実装を目指しています。
DXはツールではなく“役割”をつくること
私がKaprio Labで一貫して重視しているのは、技術以上に“人との関係性”です。技術はあくまで手段。導入して終わりではなく、それを現場の人が使いこなし、組織として前進できてこそ、DXの価値は生まれます。
だからこそ、「現場に入り込む」「一緒に考える」「改善に巻き込む」というプロセスを大切にしています。ただのIT導入支援ではなく、「現場が主役」となる仕組みを、地方からしっかり育てていきたい。その想いが私の原動力です。

愛媛から、全国へ。小さくとも確かな一歩を
今はまだ、取り組みの多くは小規模で、試行錯誤の連続です。それでも私は、自分の目の前の“現場”を見つめ続け、確実な変化を生み出すことを大切にしています。大きな夢を語るのは簡単ですが、信頼を得て、現場に寄り添いながら進む“泥くさいプロセス”こそが、未来をつくると信じています。
この愛媛の地から、実装力あるDXの在り方を地方でモデル化して発信し、少しずつでも全国へ広げていきたい。
“正解のない時代”に、最適解を
これからの社会は、AIやテクノロジーの急激な進化、予測困難な国際情勢など、“正解のない時代”に突入していきます。そんな時代に求められるのは、「与えられた答えをなぞる力」ではなく、「問いを立て、自ら考え、自ら行動し、結果を出す力」。
Kaprio Labの挑戦も、私自身の人生も、まだまだ実験の連続。でも、たくさんの“行動という実験”こそが、成功への最短ルートになると信じています。