【Day 4】 ハブは“精神論”じゃなく、信用の器と導線設計

700人の教授を動かす「非営利」の力

11月3日、私たちが最後に訪れたのは、台湾の非営利財団『Epoch Foundation』が運営するスタートアップ支援組織『Garage+(ガレージプラス)』でした。
ここの実績を聞いたとき、私たちは耳を疑いました。
1991年から現在までに、アメリカの名門MIT(マサチューセッツ工科大学)から累計700名以上の教授を台湾へ招聘している。
さらに、世界のスタートアップ3000社以上が、台湾進出のためにこの場所に応募してくる。
なぜ、一民間団体がここまでの求心力を持てるのか?
担当者のメイ・ヤン氏が語った答えは、非常にシンプルでした。
「私たちは『非営利』だからです」
Garage+は、TSMCやDeltaといった台湾を代表する大企業の寄付によって運営されています。
自分たちが利益を上げることが目的ではありません。
「台湾の産業を強くする」という共通の目標のために、企業の利害を超えて中立的に動くことができる。
この「中立性」こそが、世界中の大学や企業から信頼される「信用の器」となっていたのです。

 

「知→人→市場」を繋ぐ一直線の導線

1.「知・人・市場」の三位一体

Garage+の運営母体であるEpoch Foundationは、3つの機能を一体化させています。

  • 知:MITとの連携で、世界最先端の研究・技術を取り込む。
  • 人:「Epoch School」で、次世代の起業家やリーダーを育成する。
  • 市場:「Garage+」で、育てた人材や技術をグローバル市場へ繋ぐ。

この「知→人→市場」のパスが分断されることなく一直線に繋がっているからこそ、技術が死蔵されず、スムーズに社会実装されていくのです。


2.7日間の「圧縮検証」(Grow with Taiwan)

特に印象的だったのが、海外スタートアップ向けのプログラム「Grow with Taiwan」。
わずか7日間の滞在期間中に、旅費を補助し、投資家やパートナー企業との1対1マッチングを詰め込みます。
その数、1週間で最大13件

ダラダラと時間をかけず、「検証と意思決定のサイクル」を極限まで圧縮することで、世界中のスタートアップにとって魅力的な「ゲートウェイ(入口)」となっていました。

「ハブ」に必要なのは、熱量よりも「信頼」

私たちはこれまで、「ハブになりたい」「コミュニティを作りたい」と意気込んでいました。
しかし、Garage+を見て気づかされました。
ハブになるために必要なのは、「熱い想い」だけではありません。
「あそこに行けば、公平に繋いでくれる」
「あそこに行けば、必ず成果(出会い)がある」
そう思ってもらえるだけの「継続的な運用」と「中立的な信頼」が不可欠なのです。
一発花火のようなイベントではなく、地道に信頼を積み重ねる「器」を作らなければなりません。松山版Garage+の「最小実装」において、いきなり財団を作ったり、MITと提携したりするのは無理かもしれません。
でも、Garage+のエッセンスである「中立的な接続」と「圧縮検証」は、今の松山でも再現可能であると考えます。

 

松山・愛媛に必要なのは“挑戦が回り続ける設計”

台湾で学んだのは、挑戦は「気合」ではなく、挑戦が育つ導線(仕組み)で増えるということでした。えひめ学生起業塾は、この学びを持ち帰って、大学や地域に対して次の形で貢献していきます。
まず大学では、授業・PBL・研究・課外活動が点で終わらないように、学びが実装につながり、成果が外へ出ていく流れを、大学と一緒に“運用”として整えていきます。
地域では、空きスペースや商店街、イベントなどを活かし、学生が小さく商品やサービスを試せる「実験の場」を増やします。挑戦が増えるほど、まちの空間も産業も少しずつ動き出す、そんな循環をつくりたいです。
行政・企業とは、「支援を用意する」だけで終わらせず、挑戦が増えるように制度や機会をどう回すかまで一緒に設計し、現場で回して、改善点を言葉にして返していきます。
そして国際接続は、特別な人だけのものにしません。留学生や海外人材との接点を単発の交流で終わらせず、学びと実装の場の中に組み込み、日常的に“外とつながる口”を増やしていきます。
私たちが目指すのは、台湾で見た景色を「すごかった」で終わらせることではなく、松山で挑戦が増え続ける状態を、地域のみなさんと一緒に輝く松山・愛媛を共創することが私たち、えひめ学生起業塾の存在意義です。


(台北視察連載・完)

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