【Day 3】 保存ではなく“経済が回る活用”

「保存」のために、「商売」をする

11月2日、私たちは台北で最も歴史ある問屋街「大稻埕(ダーダオチェン)」を歩いていました。
日本統治時代の大正ロマンを感じる赤レンガ造りのレトロな建物が並ぶその風景は、どこか懐かしく、松山の道後や三津浜の古い街並みを思い出させます。
しかし、決定的に違っていたのは、そこにある「熱気」でした。
古い建物は、ただの「展示物」として静かに保存されているわけではありません。
一歩足を踏み入れれば、そこにはおしゃれなカフェ、若手デザイナーの雑貨店、そして伝統的な乾物屋がひしめき合い、多くの観光客がお金を落としています。
「古いものを守るために、税金を投入して保存する」のではなく、「古いものを活用して稼ぎ、その利益で街を守り続ける」。
台湾で見つけたのは、文化遺産を「商売の道具」として使い倒す、驚くほどたくましい「稼ぐリノベーション」の姿でした。

 

「懐かしい」を「欲しい」に変える変換力

1.「場所」ではなく「磁場」を作る(華山1914)

かつての酒造工場をリノベーションした「華山1914文化創意産業園区」。
ここは単なる「貸しスペース」ではありません。アート展示、音楽イベント、こだわりのショップが集積し、若者が「ここに来れば何か面白いものがある」と感じる磁場になっていました。

行政が許可を出すだけでなく、クリエイターと共創して「挑戦の場」に変えている点が、継続的な賑わいを生んでいました。


2.ゴミを宝に変える「商品開発力」(大稻埕)

大稻埕の雑貨店で見つけたのは、台湾ビールなどの廃瓶を熱加工して作ったお皿などの「アップサイクル商品」。
単なるリサイクルではなく、デザインの力で「欲しい!」と思わせる高付加価値商品に生まれ変わっていました。

また、私たちの地元・愛媛の「今治タオル」も、現地のニーズに合わせて形や売り方を変えて販売されていました。(丸井報告書より)
「良いものだから売れる」のではなく、「相手が欲しい形にするから売れる」という商売の鉄則が徹底されています。


3.「物語」で人を呼ぶ(九份)

かつての金鉱の町・九份。廃れかけた町を救ったのは、「映画の舞台(のような雰囲気)」という「物語の力」でした。

事実かどうかよりも、観光客が求める「ファンタジー」を徹底して提供することで、世界中から人を呼び寄せています。
これは松山が持つ「ジブリの聖地」や「文学の街」という文脈にも応用できる強力な武器です。

「空き家」は「負債」か「資産」か

松山にも、素晴らしい歴史的建造物や、味わい深い空き家がたくさんあります。
しかし、それらを「維持管理が大変な負債」として捉えてしまってはいないでしょうか?
台湾の人々は、古い建物を「最強の差別化要因(資産)」として捉えていました。
新築のビルには出せない「味」があるからこそ、若者のショップが入居し、新しい客層を呼び込むことができる。
台北で見たこれらの街は「保存」と「経済活動」は対立するものではなく、両輪であるという意識が、街全体に浸透しています。
「古いから壊す」でも「古いからそのまま残す」でもない。
「古さを武器にして、どう新しい商売を作るか」という視点への転換が松山・愛媛にも必要な視点なのかなとヒントを与えてくれています。

 

松山における「無用之用」というマインドセット

『荘子』が語る「無用の用」は、いま役に立たないように見えるものの中にこそ、のちに大きな価値が生まれる、という考え方です。
だからこそ、いきなり街全体を再開発する必要はありません。私たちにできるのは、身の回りに眠る「価値が埋もれているもの」を見つけ出し、磨き直して、もう一度まちに流通させることです。
たとえば、実家の倉庫に眠っている古い道具。
たとえば、シャッターが下りたままの銀天街の小さなスペース。
たとえば、当たり前すぎて見落としがちな、みかんや真珠といった地域の資源。

「このレトロな食器、台湾の雑貨店みたいに並べたら、ちゃんと売れるかもしれない。」
「この空きスペース、1日限定で台湾夜市風の屋台にしたら、人が集まるかもしれない。」
必要なのは大きな予算ではなく、住民みんなで“今あるもの”を面白がり、価値に翻訳していく編集力。そして、小さく試して、手応えがあれば育てていく商いの感覚だと思います。

(Day 4へ続く)
【Next】Day 4:エコシステム・総括編
“非営利”が世界を呼ぶ理由。Garage+にあった『信用の器』
~「ギブ&テイク」じゃない。「ギブ&ギブ」から始まる世界との付き合い方~

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