【Day 2】 問題は英語力より“市場の置き方”と“情報遮断”

「日本市場は、大きすぎるんです」

11月1日、台北のランドマーク・台北101の近くにある、台湾最大級の民間アクセラレーター『AppWorks』。
そこで担当者のジョセフ・チャン氏から投げかけられた言葉は、私たちにとって「褒め言葉」であると同時に、鋭い「警告」のように響きました。
「日本のGDPは世界4位。アジア圏では単独でかつ巨大なマーケットです。だから、ほとんどの日本人は英語を話せなくても、国内だけで十分にビジネスが成立して成功できる」
確かにそうです。私たちは「愛媛で一番」になれば食べていけるし、「日本で有名」になれば大成功です。
しかし、ジョセフ氏はこう続けました。
「でも、それが“意図せぬ障壁”になっています。海外の投資家やスタートアップから見ると、日本は言語と文化の壁が高すぎて、中に入っていけないのです」
私たちが「守られている」と感じていた環境は、外から見れば「閉ざされた場所」でもありました。
英語ができないことは、単なるスキル不足ではありません。世界中のヒト・モノ・カネとの「接続(アクセス)」を、自ら遮断しているということだったのです。

 

市場の「桁」を変える2つの視点

1.言語は「勉強科目」ではなく「インフラ」(AppWorks)

AppWorksでは、東南アジア(SEA)市場を見据えたプログラムが展開されています。
彼らにとって英語は「テストで点数を取るための科目」ではありません。
人口の少ない台湾市場を飛び出し、数億人規模のマーケットに接続するための「インフラ(道路や水道と同じ)」なのです。

「国内の個人最適(英語不要)」と「国の全体最適(グローバル化)」のジレンマ。
この構造に気づかない限り、私たちはいつまでも「英語の勉強」という枠から出られないのかもしれません。


2.研究を「論文」で終わらせないシステム(IAPS)

続いて訪れた、陽明交通大学内のアクセラレーター「IAPS」。

ここでは、工学・医療・半導体など多様な分野の研究シーズを、ビジネスへと昇華させる仕組みが整っていました。
特筆すべきは、分野横断で学生を育て、その成果をしっかりと「論文化」し、さらにビジネスへ還元する循環システムです。(丸井報告書より)

「研究資金を得る→研究が深まる→論文化される→社会に還元される」
このサイクルが太く、速い。

研究室に閉じこもるのではなく、最初から「社会(市場)にどう出すか」が設計図に組み込まれていました。

「愛媛で一番」の次を考えているか?

松山にいると、私たちはつい「愛媛県内でのシェア」や「松山市内での知名度」をゴールにしてしまいがちです。
もちろん、足元の地域課題を解決することは重要です。
しかし、それ“だけ”をゴールにすると、解決策のスケールも小さくなってしまいます。
台湾の学生やスタートアップは、最初から「市場の桁」が違いました。
「台湾で売れるか」ではなく、「アジアで売れるか」。
この「市場の定義」の差が、プロダクトの質や、学ぶべきスキルの基準値を決定的に変えていました。
愛媛県で有名なみかんのマーケティングを考える上でも、
「愛媛のみかんを、国内市場の日本でどう売るか」
「愛媛のみかんを、海外市場の台湾やシンガポールでどう売るか」
問いの立て方を変えるだけで、必要な準備も、協力者も、そしてワクワク感も、まったく変わってくるはずです。

 

英語が「必要になる」状況をハックせよ

「じゃあ、明日から英語の参考書を買って勉強しよう」
……と思ったあなた。ちょっと待ってください。
私たちがAppWorksで学んだのは、「英語が使う必要がない環境で勉強しても本当の使える英語は身につかない」ということです。
台湾の学生が英語を話せるのは、話さないと市場に出られない(生きていけない)からです。
私たちに必要なのは、机上の勉強ではなく、思考法を変え「英語を使わざるを得ない状況」を意図的に設計することが一番人生ので生ていく上で英語を基礎力にする唯一の手段だと思います。


(Day 3へ続く)
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~「保存」だけじゃ守れない。歴史を未来へ繋ぐための「商売」の話~

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