【Day 1】学生の「本気」を支えるのは“科目化”と“リスク共有”

台北の大学で見た台湾流アントレプレナーシップ教育

10月31日、台北。
私たちは「国立政治大学(NCCU)」にある産学連携・インキュベーションセンター『CICII』を訪れました。
「台湾はスタートアップが熱い」
そう聞いていた私たちは、てっきり学生たちが大声でピッチを練習していたり、エネルギッシュなイベントが開催されていたりする光景を想像していました。
しかし、そこに広がっていたのは、意外なほどに「静か」で「アカデミック」な空気でした。
ホワイトボードに向かい、地味な数値を詰め、教授と議論する学生たち。
「ここでは、起業は『お祭り(イベント)』ではありません。卒業単位認定される、18週間の『正規科目』なのです」
案内してくれたクリスティ・チャン氏の言葉を聞いたとき、私たちが抱いていた「熱量」のイメージが、良い意味で裏切られました。
そこにあったのは、一時の熱狂ではなく、静かに、しかし確実に未来を実装しようとする「仕組み」の凄みでした。

 

本気度を支える「3つの数字」

今回の視察初日で私たちが目の当たりにしたのは、精神論ではない、具体的な「数字」に裏打ちされた支援体制です。


1.「18週間」の正規科目化(NCCU)

多くの大学で行われる「週末起業体験」や「ビジネスコンテスト」は、あくまで単発のイベントになりがちです。
しかしNCCUでは、起業トレーニングを「18週間の授業」としてカリキュラムに組み込んでいます。

「アイデア出し」で終わらせず、「試作→検証→修正」という泥臭いプロセスを、単位をかけて学び切る。
起業を「特別な挑戦」から「学ぶべき教養」へと昇華させていました。


2.「15歳〜45歳」という青年の定義(台北市政府青年局)

続いて訪れた「台北市政府青年局」。ここで驚いたのは「青年」の定義の広さです。
下は15歳から、上はなんと45歳まで。

「若者支援」と言いつつ大学生だけに限定せず、キャリアの曲がり角にいる社会人までを包括的にサポートしています。
この「切れ目のなさ」が、挑戦の裾野を広げていました。


3.「利子全額補給」のリスク共有

さらに衝撃的だったのが、設立5年以内の企業に対する「利子の全額補給」制度です。
「失敗したら借金が残る」という恐怖に対し、行政が「金利リスク」を肩代わりする。

「挑戦しろ」と口で言うだけでなく、財を開いてリスクを共有する行政の姿勢が、若者の背中を強力に押していました。

私たちは「イベント」で満足していないか?

翻って、私たちの街・松山を見てみます。
決して、松山に支援がないわけではありません。「えひめ学生起業塾」や様々なビジネスコンテストなど、きっかけは数多く用意されています。
しかし、それらは「点」で終わっていないでしょうか?
台北の強さは、それらが「線(カリキュラム)」や「面(包括的支援)」として繋がっていることにあります。
イベントで高まった熱量を、翌週の授業で「知識」に変え、行政の制度で「資金」に変える。
この「接続の良さ」こそが、台湾のスタートアップエコシステムを回しているエンジンの正体だと感じました。
「松山には何もない」のではなく、「あるものを繋げきれていない」だけなのかもしれない。
そう考えると、私たちにもまだできることがありそうです。

 

この仕組み、松山ならどう使う?


もちろん、いきなり大学のカリキュラムを変えたり、市の条例を変えたりすることはできません。
ですが、私たち学生・若者側の「使いこなし方」を変えることはできます。
台湾の学生は、支援制度を「権利」として使い倒していました。
私たちも、松山市や大学が用意している制度を、もっと活用しましょう。
例えば、青年局のキャリアデスクのように、松山市の相談窓口に「悩み」ではなく「提案」を持ち込んでみる。
制度が整うのを待つのではなく、今ある制度を「自分たちの都合がいいように」使い倒す。
その健全な図々しさこそが、今の私たちが学ぶべき「台湾流マインドセット」なのかもしれません。


(Day 2へ続く)
【Next】Day 2:
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